「なッ・・・!?」
想定外の闖入者に明らかな狼狽の表情を浮べた女王の隙を、ドロシーは見逃さなかった。
「でやぁぁぁ!」
渾身の力を込めた竜巻脚が女王の腹部をまともに捉え、断ち切れた鎖の破片と共に、
その身体は宝物殿の中へと一直線に突っ込んでいった。
「あ・・・ありが・・・とう」
「なんの。こちらも間に合って良かったでござるよ」
荒い息で礼を言うドロシーに軽い笑みを返すかぐや。
だが直後、ハッとした表情で宝物殿の方へと身体ごと向き直り、剣を構えた。
既にそこには女王の姿は既に無かった。そこに『いた』のは卵のみ。
だが、いつの間にか先ほどの倍はあろうかという大きさにまで膨れ上がった卵は、
鈍い光と共に重く禍々しい胎動を始めていた。
「身を捧げたか、食われたか。どちらにせよ、何か出てくるでござるよ」
胎動は急激に激しさを増し、やがて低い地鳴りの音と共に全身に無数の亀裂が入った。
「あれは・・・!?」
剥がれ落ちる外殻の中から現れたのは、まるで幼女のように愛らしい姿。
だが、全身妖しく輝く瞳は女王そのものだった。
身構えるドロシーとかぐやを一瞥し、ニィッと口元を歪めた『それ』は、
キンキンとした耳障りな響きを持ちながらもどこか甘ったるい声で、こう呟いた。
「コノヨハ ヒドク タイクツダワ」
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