今回の事件の黒幕。そう聞いていたはずの西の都の王W.O.OZは『先の魔法大戦』の英雄『ミュンハウゼン』であり、 非常に高潔な人物であった。 そして自分を導いてくれた恩人たるかぐやには、W.O.OZとの戦いの直後に背後から斬り付けられ、 またそのかぐやも今、糸の切れた操り人形のように王宮の床へと転がっていた。 そして・・・W.O.OZの持つ巻物『アーカイブス』から噴出した黒い霧のような物が収束して人の形を取った際、 彼女の混乱は遂にピークへと達した。
「キミ・・・誰?」 ドロシーの問いかけに対してゆっくりと振り返ったその姿に、彼女は息を呑んだ。 その顔は、あまりにもドロシーに酷似していた。 ただその眼光は異様なまでに鋭く、漆黒の全身に走る無数の紅い光筋は血管のように脈打ちながら、 鈍く怪しい輝きを放ち続けていた。 『みぃ〜んな』 その口元がニイッと歪み、ドロシーは背筋が凍りつくのを感じて咄嗟に身構えた。 『壊れちゃえ♪』 途端、まるで暴風のような大きな波動が発せられ、王宮の石畳で出来た床がまるで津波のように次々と捲れ上がった。 反応の遅れたドロシー達の身体は木の葉のように宙を舞い、そして激しく床に叩き付けられた。 『アハ、アハハハ!な〜んだ、アンタ弱いじゃん♪』 楽しげで狂気に満ちた笑い声が王宮にこだまする中、ドロシーの意識は徐々に遠のいていった・・・