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西の都・エメラルドシティの王城がようやく静けさを取り戻した頃、
ドロシーは床に大の字になったまま、天井に開いた大穴から射す陽の光に目を細めていた。

もう二度と大切な物を失いたくない。その為に強くなりたい。真実を確かめたい。
だが『真実』はその強大な力で、そんな彼女の思いを根こそぎへし折ってしまったのだ。
ドロシーの頬を一筋の涙が流れた。込上げてくる感情を抑えきれず、溢れ出る涙を拭うことも出来ず、
自分の無力さを痛感しながら、ただひたすら彼女は泣いていた。

その激しい嗚咽の声を聞きながら、意識を取り戻したかぐやはただ呆然とした様子でへたり込み、
激しく損壊した王城の様子を眺めていた。
操られていた間も(悔しいことに)意識があった為、自分が一体何をしたのか、何をしてしまったのか、
彼女自身ハッキリと解かっていた。
(修行が・・・・足りぬ・・・・)
東の魔女と恐れられた剣豪が、これほどの無力感に襲われたことはかつて無かった。

魔法の巻物アーカイヴスより生まれ出でた『(ドロシーに酷似した)何か』は、ドロシー達をその圧倒的な力で打ち据え、叩きつけ、
やがて動かなくなった彼女らに興味を失ったようにその姿を消してしまった。
「封印の中でなお、成長を続けておったというのか」
 W.O.OZが呟いたその言葉の持つ意味は、まだこの時は誰も理解出来なかった。

 気が付けばいなくなっていたトトと名残惜しそうなタイガー・リリーに別れを告げ、
ドロシーはまた武者修行の旅へと向かう決意を固めていた。
 自らの育ての親であり、また師匠である人物に会うため。
W.O.OZの一番弟子という武芸百般の達人と会うため。
そして・・・・もっともっと強くなり、大切なものを取り戻すため。
「しばしのお別れでござるな」
 神妙な面持ちのかぐやに向かって、力強く頷きながら満面の笑顔を見せるドロシー。
もはや迷いの無いその表情を見て、かぐやの口元にも薄い笑みが浮かんだ。
かくして、それぞれがそれぞれの目的を持って旅立つことになったドロシー達。
この先彼女達を待ち受けるものは?そして、彼女達の運命は?アーカイヴスから生まれた存在の目的とは何なのか?

いくつもの想いと運命とが交差して、大きなうねりへとつながっていく壮大な物語。
誰もが夢見て憧れた、冒険世界がここにある。
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